あるフランス人の友人は「物(サービス)を買う」という行為は"premier acte politique(プルミエ・アクト・ポリティック=最初の政治的行為)"だと言います。私たちは選挙で投票する以外には、簡単に世の中に対して何かを働きかける方法がないと思ってしまいがちですが、彼女曰く物(サービス)を買うというのも立派な政治的行為であって(別に市民運動とかに参加しなくても)誰でもが手軽にできる事だ、と。

ある企業があってそこが不正をしたり、自分の考えと合わない経営方針でものを売っているとしたら、批判の意思表示をするためにその企業の製品を買うのをやめるとする。そういう人が大勢出てきてその企業の製品を買わなくなって、売り上げが減ったとしたら、その企業は経営が立ち行かなくなるということです。彼女はそのように社会に対して意思表示をしていると言うことなんですね。そうやって社会を動かすことができると信じているわけです。

でも、NHKが不正をしたから受信料を払わない。年金の運用の方法に不満があるから、或いは社会保険庁や厚生労働省のやりかたに反対するから年金の保険料を払わないというのもこの範疇に入るのだろうかと思いましたね。実際に色々な問題が噴出した後にNHKの受信料とか年金保険料の未納率が上がったりしましたが。。。ということは、日本人も知らず知らずのうちにpremier acte politiqueをやっているということでしょうか。

うーん、とはいえ、どこかの企業の製品を買わないのと年金保険料支払い拒否はまた別か。年金は万が一破綻しなかったときはとばっちりは自分に来ますからねえ。いずれにしろ、対企業に関してはこの行為はそれなりの意味を持つかもしれません。だから、例えば世の中が読売新聞はけしからん!JR西日本がけしからん!TBSがけしからん!とかって言うんだったら、そう思う各人がそういう行動を起こすという方法もあるんだなあと思った。けしからん!けしからん!って言うだけで例えばそのまま読売新聞を購読し続けていたら、確かにあんまり説得力はないかもしれませんよね。

なんていうかそれから、雪印とか三菱自動車の売り上げが落ちたのも同じ理屈のような気もしますが、それは不祥事でイメージが低下したからで抗議というのとはまたニュアンスが違うかもしれませんね。だって、今回ので例えば読売新聞の発行部数が著しく落ちた(多少は落ちてるかもしれませんが)とかTBSの番組の視聴率が著しく落ちたと言う話は余り聞かないですよね。

いえ、別に私は上記の会社が売っているもの、提供しているサービスに対してボイコットすることを推奨しているわけではありません。批判を意思表示するならそういう方法もあるんだなあ、ってだけですので念のため。

とは言え、フランスではマクドナルド襲撃したりとか、大臣の家の電気系統を壊して大臣の家だけに電気をいかなくするとかっていう事件が起こるんですよねえ。それはそれで過激です。。。

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週刊!木村剛より
2005.05.17 [木村剛のコラム] メディアのネット批判は正当か?